顎関節症・歯ぎしり・食いしばり
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顎関節症の類型

顎関節症には様々な症状があり、そして顎関節症という病名には類型があります。
I型: 咀嚼筋障害
主に顎関節の周囲の筋肉に症状がある場合です。
II型: 関節包・靭帯障害
顎関節痛があり顎関節部の安静が必要となります。
III型: 関節円板障害
関節を動かすと雑音(クリッキング)がしたり、口が開きにくかったりの症状があります。
IV型: 変形性顎関節症
関節を動かすとクレピタスという雑音がする場合があります。開口障害も現れることがあります。
V型: その他
他覚症状を伴わない顎関節痛・筋痛を症状とします。
顎関節症のスプリント(マウスガード, マウスピース, アプライアンス)
当院で顎関節症を行う時に患者様の状態によってはスプリントもしくはアプライアンスを作製し、筋肉の緊張や下顎頭の位置などを調整します。すべての顎関節症の患者様が適応ではありません。
スプリントは、主にスタビライゼーションスプリントやリポジショニングスプリントと呼ばれる種類のものを当院は利用します。患者様の状態によっては上顎ではなく下顎の歯列を覆うスプリントを選択することもあります。
スプリントは長期に使用すると逆に痛みを惹起したり、歯列不正を引き起こすこともあり定期的な調整が必要となります。
スプリント(マウスガード, マウスピース, アプライアンス)の保険名称
顎関節症の治療を行う際にスプリント(マウスガードのようなもの)を製作し、患者さまに使用していただくことがよくあります。
顎の状態を改善するためによくされる一般的な方法です。もちろん使用するには診断が必要です。
保険治療で認められていて、そのスプリントの名称を保険用語では、最近、口腔内装置と呼ばれるようになりました。
「口腔内装置1」は、義歯床用アクリリックレジン樹脂(硬いプラスティックのような素材)により製作されたもので、咬合関係(かみ合わせ関係)が調整されたものです。
「口腔内装置2」は、熱可塑性シート(アクリリックレジンほど硬くない既製品のシート)等を歯科技工用成型器により吸引・加圧して製作、 または、型取りして作った模型に直接常温重合レジンを圧接して製作された口腔内装置で、咬合関係(かみ合わせ関係)が調整されたものです。 「口腔内装置3」もありますが、咬合関係(かみ合わせ関係)が付与されていないもののため顎関節治療にはあまり用いられないと思います。
患者様の顎関節症の状態によって、上記の適応を選択します。また口があきにくい、顎が痛いなどはかみ合わせだけではなく、不適切な顎の開け閉めなど様々な要因があります。
口が開かない
顎関節症になった際に、症状として口が開かない場合があります。このような開口障害を主な症状とし、関節円板転位が原因と考えられる場合、自己開口訓練が有効と言われています。もちろん、歯科医師の診断後の、指導のもとでの訓練です。自己流は危険です。開口訓練すると逆に痛みが増す場合などは、中止したほうがいいですが、訓練ですので多少の痛みを伴うこともあり、鎮痛剤服用下での訓練を実施することもあるかもしれません。
関節円板と開口障害
顎関節には、関節円板という軟骨があります。これが適切な位置からずれると関節の動きを妨げることがあります。また、顎関節の周囲の筋肉、いわゆる咀嚼筋の痛みのため顎がうごかせなくなる場合があります。こういったケースでは”口が大きくあけられない”といういわゆる開口障害という症状がでます。また、大きく口を開けないで長い間いると、顎関節や筋肉の動きが制限され、開口障害という状態になることもあります。機能的な問題ではなく、腫瘍などで顎が動かず、口が開きにくいなどの特殊な原因疾患がある場合もあります。顎の病気は長引くことが多く、自分で判断せず、歯科医院を受診することをお勧めします。
☆顎関節症に対する治療のステップ
例) 問診→口腔内外診査→レントゲンなどの検査→スプリントによる保存療法開始→顎運動の指導→スプリントの調整→口腔内外診査→レントゲンなどの検査→メインテナンス (すべての症状がこの治療ステップの適応ではありません)
歯ぎしり・食いしばりのマウスガード/マウスピース
歯ぎしり・食いしばりに対するスプリントは平成30年度の歯科保険(診療報酬)制度の改定によって、顎関節症に対するスプリントと同様に口腔内装置としてまとめられました。頻繁な歯ぎしりの症状がある場合には、顎関節や歯に悪影響を及ぼすことがあります。例えば、異常な咬耗や顎関節周囲の筋肉の痛みや疲労感などです。ひどい場合は、口があきにくいなどの症状を訴える方もおられます。頻繁な歯ぎしりをされている方または自覚されている方は、早めに歯科医師に相談したほうがいいと思われます。歯を歯ぎしりから守りましょう。歯ぎしり用スプリントは、歯を守り、顎の周囲の筋肉の緊張、収縮度合いを軽減します。一般的には、スタビライゼーションタイプというスプリントが歯ぎしりの患者様に対して製作されることが多いと思わ れますが、歯の状態やかみ合わせの状態によって異なるため、詳細は当院にお気軽にご相談ください。最近ではスマホのアプリで寝ている間の歯ぎしりをチェックできます。試してみるのもいいかもしれません。治療に対するモチベーションもあがりますので自分の歯ぎしりの状態を知ることはとても大事です。
☆歯ぎしり・食いしばりに対する治療のステップ
例) 問診→口腔内外診査→(レントゲンなどの検査)→(筋電計による検査)→ マウスガードの製作→マウスガードの調整(すべての症状がこの治療ステップの適応ではありません)
スポーツ時のマウスガード/マウスピース
ラグビーなどの体と体が頻繁にぶつかるスポーツだけでなく、野球やサッカーなど、中学生や高校生が試合を行う際にはできるだけマウスピースをつけたほうがいいと個人的には思います。試合ともなれば普段の練習とは違うハプニングが起きやすく、前歯などがかける事故なども起きやすいと思います。実際、そんな場面に出くわしたこともあります。しかし、歯科医院ではスポーツ用のマウスピース(スポーツマウスガード)は現在のところ、保険での製作はできません。自費での製作と調整となります。費用は約22,000から33,000円/片顎(税込)で材質と製作方法によって異なります。オーダーメイドでの製作以外のスポーツ用のマウスピース(スポーツマウスガード)は、顎などに悪い影響を与えることもあるため、安易に利用せず当院にお気軽にご相談ください。
詳細は、一般社団法人日本顎関節学会のHPをご覧ください。
☆スポーツ時のマウスガード/マウスピースに対する治療のステップ
例) 問診→口腔内外診査→(レントゲンなどの検査)→(筋電計による検査)→ マウスガードの製作→マウスガードの調整(すべての症状がこの治療ステップの適応ではありません。自費治療となります。
睡眠時無呼吸症候群のマウスガード/マウスピース
睡眠時無呼吸症候群の患者様のなかで閉塞型と診断された方のマウスピース(マウスガード)を製作しています。医師の診断があれば保険適応です。寝ている時に呼吸をしなくなり血中の酸素飽和度が低下すれば命にも関わります。疑いのあるかたは専門医の診察を早く受けた方がよいと思います。当院から睡眠時無呼吸症候群の専門医へ紹介もできます。睡眠時無呼吸症候群のマウスピースの詳細に関しては当院にお問い合わせください。
☆睡眠時無呼吸症候群に対する治療のステップ
例) 問診→口腔内外診査→(レントゲンなどの検査)→(筋電計による検査)→ 睡眠時無呼吸症候群の専門医へ紹介→専門医による検査→閉塞型睡眠時無呼吸症候群の診断→当院へ紹介→マウスピース(マウスガード)の製作→マウスピース(マウスガード)の調整(すべての症状がこの治療ステップの適応ではありません。直接、専門医からの診断、紹介がある場合は当院から専門医への紹介は行いません。専門医の診断のもとで行われる閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者様のマウスピース(マウスガード)の製作は保険適応です。
TCH(歯列接触癖)
日本語で歯列接触癖といいます。なにもしていない時は、人は上下の歯を接触させていないのが普通です。安静な時に、持続的に無意識に上下の歯を接触させる癖をTCHといいます。この癖は、小さな力ですが持続的なため、上下の歯に負担をかけ、また顎の周囲の筋肉にも負担をかけます。そのため顎関節症の原因になることもあります。また歯や歯周組織の病気の悪化にもつながる可能性が考えられています。TCHをやめるためには、ストレス解消、つまりリラックスがよいといわれているのですが、現代はストレス社会です。なかなかすんなりとはいかないですよね。すぐに癖を解消しなければと思わず、長い期間をかけ、癖をやめようという意識をもって、継続することが大事なのかもしれません。あいうべ体操も有効と言われています。マウスガードの対象ではないことが多いと思います。
参考文献
- クラウンブリッジ補綴学 医歯薬出版株式会社